あの家に暮らす四人の女たちを読みながら、時々ぷっと噴出しました。面白いよーこのお話。この女性たちはちょっと残念な感じだから上手くやっていけているのですね。中年女性が憧れる家庭環境です。
【感想】三浦しをんの『あの家に暮らす四人の女』
一つ屋根の下に暮らす不思議な四人の女性なんだけど途中から、この人誰???みたいな男性も登場します。細かいことは気にしない感じがまた素敵です。
誰にもどうやって説明したらいいのかわからない山田さん。
開かずの間にいる河童のミイラ
佐知のお父さんって何故いない?
一応、河童の干物に「お父さん!」って抱き付いてみたりして。。。。。。それに対して何も感じないと感想も言ってみたり
なにより、ハチ公の尾っぽにつかまって待ち合わせっていうのも可笑しいでしょう~~これが佐知と雪乃の出会いのシーンなんです。
雪乃の会社の後輩の多恵美はダメンズメーカーみたいだし。
佐知のお母さんの鶴代も只者ではありません。ゆったりとした緩やかな小説ですが、それがまたいい味をだしています。
一度は友達と、「老後に一緒に暮らせたら楽しいね~」なんて話したことはないですか?
それが実現しちゃったような四人の女たち。だから楽しそうなんですよね。「親しき仲にも礼儀あり」それがちゃんとできているんです。
これは女性の夢ですね。
お化け屋敷と近所の小学生に言われてしまっている豪邸(レトロ風洋館)には開かずの間があり、鍵が掛かっているのに家族に内緒で勝手に開けちゃうし。開かずの間が開いちゃっても誰も気にしないし。雪乃が微動だにせずに刺繍教室の生徒さん達に中をみられないように見張っているのも変です。
兎に角にも面白いです。
この本の帯には“ざんねんな女たちの、現代版『細雪』”とありますが、この4人が残念な女たちなら私も残念な女かもしれません。。。。。
『細雪』 谷崎潤一郎 著
『あの家に暮らす四人の女』の引き合いにだれさた『細雪』は谷崎潤一郎の小説です。名作なので、三島由紀夫をはじめ、多くの作家たち影響を与えています。
裕福な四姉妹、鶴子、幸子、雪子、妙子の物語です。名前もそっくりなんです。鶴代、佐知、雪乃、多恵美・・・。
牧田家で暮らす四人の女は、平日は朝七時に食卓を囲む習慣だ。
『あの家に暮らす四人の女』三浦しをん 著 P.3より
この文体もまた魅力的です。
細雪とはまったく違う4人ですが、だってあちらは4姉妹ですし。ですが気兼ねなく楽しく暮らしているのはこちらの4人の女達なはずです。
まったりとこの小説を楽しんだ後には、細雪の世界にも浸ってみたいと思います。
女性ばかり4人の生活って良いな。
『あの家に暮らす四人の女』の4人の女性の男性観
母の鶴代の男性観は、美しい箱入り娘の見た目と違い、
「まっとうな男ほど退屈な存在はない」
しかし、佐知のお父さんの神田君との結婚は、
「まっとうさを正確に把握できなかったがえに、結婚生活に失敗したかもしれないな」
激しく熱く結婚生活を送るのですが、お父さんは佐知が生また時に妻に家を追い出されてしまいます。
まっとうさを軽んじると結婚生活って破綻したり、しっぺ返しを食ってしまうのですね。
佐知が一番まともな気がする。
自分の刺繍作品をお嬢様の片手間と軽んじている人を、今までばっさばっさと切ってきたのだと思います。
結婚しても刺繍続けてもいいよ・・・・・なんだそりゃ~~ですよね。
だから、壁紙職人さんに一目ぼれしたときにも、「この人なら理解しあえそうな気がする」って思えたから好きになってしまいます。
決してイケメンだからではありません^^
美人の雪乃さんは、
「四十年近く生きてわかったのは、男女間に真の理解は成立しない、ということです」
雪乃は重々しく告げた。
「そうかなあ」
「そうだよ。たとえば彼らは、自分は地図が読めると思っている。だけど私が見るところ、方向音痴の男は結構いるし、地図ではなく文章で説明されれば、一部の男性とかなりの数の女性が容易に目的地にたどりつけるという事実に気づいていない。つまり、地図は万人に適したツールではないということにも、自分とはちがう世界のとらえかたをしているひとがいるということにも、気づいていない。想像力が欠如してるんだよ。そんな相手を理解しようとしてもむなしいだけ」
『あの家に暮らす四人の女』三浦しをん 著 P.208より
彼女によると、
恋⇒理解ではなく勝手な思い込み
愛⇒思いこみが打ち砕かれたあと、理解し合えぬ相手とそれでも関係を維持する根性と諦めのこと
なんです。なんだか妙に納得してしまいます。
最後に多恵美ですが、彼女は、DVでストーカーまでしてしまう全く働かない彼に、結婚してってストローで作った指輪をもらっただけで、許してしまいそうになるダメンズメーカーです。冷静で冷酷な雪乃が一緒でなかったのなら危ないところでした。
可愛くてモテるのに本当に残念な多恵美です。
【感想】三浦しをん『あの家に暮らす四人の女』のまとめ
三浦しをんさんの作品では、『舟を編む』『やまほろ駅前多田便利軒』 『まほろ駅前番外地』 『まほろ駅前狂騒曲』を読んできました。
どれも大好きな作品です。
この人はどうしようもない人だな~みたいな登場人物はいなかったです。
誰もが、ちょっと素敵だなって思わせてくれました。
どれも面白かったけど、今読み返したい本は、『舟を編む』ですね。
三浦しをんさんは、言葉の使い方がとても好きな作家さんです。