利休の茶の湯の世界は、もっと清廉なものかと勘違いをしていました。しかし実際は色香が匂い立つものだったようです。利休と高麗の姫とが簡素な小屋に美しい者と一緒に隠れている。そんな様子が畳1畳半の利休の茶室の世界で繰り広げられていました。
利休が残した茶の湯の世界とは
茶道の心得とは、茶を通じて、和敬清寂(わけいせいじゃく)であることを重要視しています。千利休は「和」、「敬」、「清」、「寂」を表す「四規」を掲げて大切にしてきました。
千利休が客人を心を尽くしてもてなすことが、お互いの心を「和」らげて、そこから生まれる謹みと「敬」いを大事にしてきました。その際にその茶室を「清」浄であることで、侘びと「寂」(さび)の世界が作られたのでしょう。
利休の死後に、秀吉に許された子供たちが茶道を現代まで継承させていきます。
千家の本家である堺千家(さかいせんけ)は千利休の実子である千道安が、堺の家を継いだことから始まります。ですが、道安には子供が生まれませんでした。なので一代で堺千家は断絶してしまいます。
なので、堺千家の傍系が、三千家(さんせんけ)と呼ばれます。
利休の後妻の連れ子の小庵が京の屋敷を継ぎました。その子供の宗旦(天才だったらしいです)には4人の男の子がいました。
三千家の家元は4世から始まります。
表千家(おもてせんけ)は、京の母屋の屋敷をゆずられたので その名がつきました。宗旦の三男、宗佐が継ぎました。
裏千家(うらせんけ)は、宗旦の宗室が京の母屋の裏の家を譲られます。なので裏千家を名乗ります。
武者小路千家(むしゃこうじせんけ)は、宗旦の二男の宗守が京の武者小路に屋敷を構えたので武者小路千家となりました。
『利休にたずねよ』の小説の中の世界
この物語は、順々に過去にさかのぼっていきます。山本兼一氏の文章力に魅せられてしまいます。時系列が逆になっているのに、物語が滞りなく進行をしていきます。
それは、切腹直前の利休の言葉から始まり、利休の妻に続き、戦国時代の名だたる武将達や弟子たちの言葉で利休のことが語られていきます。
利休のあまりにも美に対する執念から、それぞれが訊ねたくなる言葉が浮かび上がっていきます。
女のものと思われる緑釉の香合を肌身離さず持つ男・千利休は、おのれの美学だけで時の権力者・秀吉に対峙し、天下一の茶頭に昇り詰めていく。
刀の抜き身のごとき鋭さを持つ利休は、秀吉の参謀としても、その力を如何なく発揮し、秀吉の天下取りを後押し。しかしその鋭さゆえに秀吉に疎まれ、理不尽な罪状を突きつけられて切腹を命ぜられる。
利休の研ぎ澄まされた感性、艶やかで気迫に満ちた人生を生み出したものとは何だったのか。また、利休の「茶の道」を異界へと導いた、若き日の恋とは…。
「侘び茶」を完成させ、「茶聖」と崇められている千利休。その伝説のベールを、思いがけない手法で剥がしていく長編歴史小説。第140回直木賞受賞作。https://www.amazon.co.jp/ Amazonより
千利休が切腹させられたのは、秀吉の嫉妬なのか?それとも恐れなのか?石田光成の嫉妬もありますよね。
小説では触れられてはいませんが、利休の死後3年が経つと、子供達は許され京も戻されたようです。
秀吉は利休に罪悪感があったのでしょうか?
ですが、この小説では、利休の美に対する想いを中心に描かれているのですが、
それなのに、戦国時代そのものを感じてぐんぐん引き寄せられていきました。
おススメの本です。
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【読了】美しい茶の湯の世界『利休にたずねよ』のまとめ
千利休の人物像は、背が高く、格好も良く、商才も財力もあり、社交性に優れていました。
美意識が高く、品があり、センスも良く、愛人も数人いて、家族を顧みないで茶道の事ばかり。。。。。
現代で考えるとどんな人を想像すればいいのでしょう。
なんだか精力的なイメージですよね。
エネルギーに溢れていそうです。
完ぺきな美しさから、何かを欠き、その中に更なる美を作りだしてきました。
自分の信念の為なら、家族を犠牲にもしてしまう強い意志があったからこそ、三千家が栄えていったのでしょう。
この本では、登場人物達が利休に疑問や問いを残します。
利休はこの本の中で、利休は切腹の理由を語ります。
やれ、唐(から)への出陣に異を唱えたとか、切支丹(キリシタン)であるとか、娘を側室にさしださなかったからだとか。
利休にしてみれば、すべて的外れな憶測である。
秀吉は、利休が気にくわないのだ。
美を思うがままにあやつり、美の頂点に君臨する秀吉が許せないのだ。
そんなことは、秀吉の顔を見ていれば、手にとるようにわかる。
『利休にたずねよ』山本兼一 著P.25より
以前は、千利休は秀吉に対する対応を間違えて命を落としてしまった不幸な人だと考えていたのですが、
愛する人がいて、愛してくれている人もいて、茶の世界では成功を納めていて、
美を思うがままに操っていて、美の頂点に君臨していたと自分でも納得していたのなら、
そして、名を残し千家が続いていっているのだから、人生を謳歌し満足をしていたのではないかと思っています。
こちらの動画もおススメします。
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