村上春樹の『騎士団長殺し』を味わって読むというよりは、貪るように読んでしまいました。こんな読書の仕方で感想を表現するのはどうかと思いますが、とりあえずこんな解釈をしてみました。
村上春樹の『騎士団長殺し』読書感想
36歳の肖像画家である主人公が、妻から離婚を言い渡されます。
淡々と、穏やかな感じで、です。
「とても悪いとは思うけど、あなたと一緒に暮らすことはこれ以上できそうもない」
と言われてしまいます。
離婚で原因は言うことはできないようですが、
こんな感じです。
↓
- 直接的には主人公(夫)には責任はない
- 妻が生々しい夢を見た後に、もうあなたとは暮らしていけなくなってしまったと確信した
- 離婚を確信したその妻の夢には、主人公(夫)は出てこなかった・・・だから直接的な責任はない
↓
- 夢は一つの引き金に過ぎない
↓
- その夢を見ることによって、いろんなことがあらためてはっきりした
実際の離婚劇では、考えられないような内容なんです。しかも奥様は浮気をしているのです。
かなりイケメンと。
これらのことは、
いろんな物事のひとつにすぎないようです。
これらの事を、なんでこんなことになったのか?真剣に考えながらも、主人公は怒ってもいないし、頭に血が上ってもいないんです。
ですが、離婚を言い渡された方の主人公は、
かなりダメージを受け、
ここにはもう居られないとすぐに家を出ていきます。
主人公にとって、
妻は、
出会った瞬間に恋に落ちた女性なんです。
その時に彼女がいたのにも関わらず。
みんなに反対されても結婚した相手でした。
ショックを受けたまま、主人公は家を出て、さまよいます。
妻の方が家を出ていくと言っていたのに、主人公の方が家を飛び出します。
ですが、それが正解の行動だったようです。
彼の未来が開かれた瞬間です。
主人公が玄関から出ていくときに、
妻は、
別れても友達でいたいと言います。
時々逢って話がしたいと。
結局は、
家族再生の話のようだから。
色んな人が、色んな事をして、家族の元へ帰っていきます。
時にはものすごいことをしても。
何事もなかったかのように。
村上春樹の『騎士団長殺し』の個人的な解釈
勝手な個人的な解釈ですが、
妻は主人公が求めている自分の中の妹の存在に段々気が付いてきて、
遂には夢にまでみてしまったのではないかと思っています。
ただし私の側にはひとつだけ、彼女にあえて打ち明けなかったことがある。それは妻の目が私に、十三歳で死んだ妹の目をありありと思い出させ、それが彼女に心を惹かれた最大の理由だったということだ。もしもその目がなかったら、私はあれほど熱心に彼女を口説き落とすようなことはなかっただずだ。でもそのことは言わない方がいいと私は感じていたし、実際に最後まで一度も口にしなかった。
『騎士団長殺し 第1部「顕れるイデア編」』 村上春樹 著 P.48より
だから、
主人公が穴でさまよったのは、
「妻の中に住んでいる妹の存在を、昇華させる」ために必要だったことだと思います。
冥界のような穴に入ったことは、
グレートギャッツビーの世界を彷彿させる、免色 渉(めんしき わたる)さんや、その免色さんの娘かもしれない、
秋川 まりえ(あきかわ まりえ)13歳の中学生生の女の子達の様々な想いが絡みあったからなんだと思っています。
もちろん、物語のキーパーソンの、
高名な日本画家である、
雨田 具彦(あまだ ともひこ)さんの(92歳で危篤状態)強い意志も相まって、
主人公の彼を、冥界のような穴に誘います。
誘うのは、
イデア
と、
メタファー
なんですけどね^^
そして、そこから脱出したあと、
妻の柚(ゆず)に連絡を入れます。
冥界で自分の恐れを突き破り、妻に逢う決心をしたのだと思います。
【感想】村上春樹の『騎士団長殺し』自分勝手な解釈のまとめ
主人公は、妻から離婚を言い渡されたあと、東北を放浪しますが、神奈川県小田原市郊外の山中にある雨田具彦(高名な日本画家で入院中)のアトリエで静かな毎日を送っているはずなんです。
小田原市内の絵画教室で指導しながら。
ですが、真夜中の2時ごろ・・・丑三つ時に、外から鈴の音が聞こえてくるなど、
心理的に怖い場面が多々登場し、読み手をどんどん引き込みます。
自分の心とも向き合う一冊です。