「お義母さん、これ……いったい誰が片付けると思っているんですか……?」
姑が亡くなり、残された膨大なモノを前に途方に暮れるお嫁さん。
気力も体力も限界、50歳を過ぎて急激に衰えを感じる身体。
さらに追い打ちをかけるのが、想像以上に高額な遺品整理の費用です。
今回は、そんな誰もが直面する可能性のある「遺品整理の現実」をリアルに描いた、
垣谷美雨さんの小説 『姑の遺品整理は、迷惑です』 をレビューします。
私自身や身近な人の体験も交えながら、
この作品が突きつける「遺品整理の大変さ」を掘り下げてみました。
遺品整理は「負の遺産」との格闘
本書を読んで、私の記憶が一気に蘇りました。
かつて祖母の家を整理したとき、軽トラックを山盛りにし、
何度も何度も環境センターへ通ったことがあります。
義母の遺品整理でも同じでした。
流しの下に所狭しと並んだ 「謎の瓶詰め」 の数々。
漬物、梅酒、梅干し、ニンニクの醤油漬け……
中身は水分たっぷりで重く、いつ作られたのかも不明。
食べられる気はしない、けれど捨て方もわからない。
量が多すぎて、ただ呆然と立ち尽くすしかありませんでした。
この 「重くて、捨てづらくて、誰も引き取りたがらないモノ」 こそが、
遺品整理を「迷惑な作業」に変えてしまう最大の要因だと感じます。
しつこいようですけどね、お義母さん、
新しいのを買ったんなら古いのは捨ててくださいね。古いのを大事に取っておいて、
いったい何に使うつもり使うつもりだったんですか?いいえ、それ以前に買い替える必要があったんでしょうか?
気分を変えるためですか?ほんと、いい加減にしてくださいね。
『姑の遺品整理は、迷惑です』垣谷 美雨 著 P.235
不思議なことに
遺品整理を始めたころの怒りが、だんだん温かいものに変わっていきます。
ほろりとくる誰にでもやってくる物語。
読んで良かったです。
女の生き方を考えさせられる物語です。
「一番厄介な他人」──夫という存在
遺品整理をさらに複雑にするのが、家族間の温度差です。
主人公・望登子(もとこ)は、処分してよいか確認するため、
ガラスケースに入った置物を写真に撮り、夫にメールを送ります。
しかし返ってきた答えは、「全部引き取る」
自分では片付けない。
置き場所も考えない。
けれど「思い出」だけは手放したくない。
望登子が夫を
「今や一番厄介な他人」
と表現する場面は、あまりにも的確で、思わず苦笑してしまいました。
「大切なら、誰が見ても大切だと分かるように扱っておいてほしい。
地層のように積み上げて、何十年後に発掘して
『これは大事なものだった』と言われても、正直困る」
遺品整理の現場では、
この “動かない人の意見” が、
実際に手を動かす人をどれほど追い詰めるかを痛感します。
想像以上の重労働と、現実的すぎる費用
遺品整理は、精神的にも肉体的にも過酷な作業です。
作中で友人の冬美は、こう忠告します。
―――焦りは禁物よ。
友人の冬美にそうアドバイスされたのだった。
―――あのね、最初にどの部屋もざっと見るの。それからきちんと計画を立てた方がいいわ。
闇雲に手をつけ始めると、私みたいに身体を壊すわよ。遺品整理っていうのはね、想像しているのよりずっと重労働なんだからね。
『姑の遺品整理は、迷惑です』垣谷 美雨 著 P.8より
一週間頑張った友人は、半分近く頑張ったところでくたびれ果てて熱をだしてしまいます。

「闇雲に手をつけると、私みたいに身体を壊すわよ。
遺品整理って、想像している以上に重労働なんだから」
彼女は一週間必死に頑張った末、
半分も終わらないうちに体調を崩してしまいます。
そして最終的に業者に依頼し、支払った金額は 70万円。
「そんな蓄え、普通の家庭にある?」
思わずそう呟いてしまう、あまりにも現実的な数字です。
望登子が、
お気に入りの紅茶を飲み、
サンドイッチを食べ、
音楽を聴きながら作業を続ける姿に、
「自分の機嫌を自分で取らなければやっていけない」
という遺品整理の真実が凝縮されています。
「ウエス」という言葉を知っていますか?
物語の中で、望登子は夫の 分別意識の低さ にもため息をつきます。
夫は、古布を再利用する「ウエス」という言葉すら知りません。
ウエス(Waste)とは
機械の油汚れなどを拭き取るための布で、
古着や布の端切れを再利用したものです。
こうした日常的な家事や分別の知識の差が、
遺品整理という極限状態で、
夫婦の溝をさらに深くしていく様子が、非常にリアルに描かれています。
怒りの先に残る「温かさ」
『姑の遺品整理は、迷惑です』が心に残るのは、
単なる愚痴や不満で終わらない点にあります。
遺品整理を通して、
望登子の怒りは、少しずつ別の感情へと変化していきます。
姑・多喜の生き方。
実母の人生。
「嫁の立場」と「娘の立場」の違い。
親戚との確執や、業者への後悔。
さまざまな感情が交錯する中で、
最後に残るのは 「思いやり」と「想像力」 でした。
誰にでも訪れる別れのあと、
人はどう生き、どう片付け、どう引き継ぐのか。
静かに問いかけてくる物語です。
読者の声・レビュー
お嫁さんの立場と娘の立場は違うということ(娘の眼からは立派な母親でも同居の嫁では微妙な空気が)
色々な感情がうごめくと思いますが、
思いやりと想像力を持って怒りを沈めて頂けたらと思います。
美紀さんは、偉い。
「幾ら元々モノが良かったと言って、これ欲しがるヤツがいると思うのか?」
と、自分なら言ってしまう
一応の「了解」を取る事は「尊重」であって、「許可」を頂きたい訳ではない
「おまかせします」と言われるとやみくもにムカつく。「お手数かけますが、宜しくお願いします」と言え!まかされたくないんだよ。ぐちゃぐちゃ言うならお前がやれよ!
…自分は「実家」の始末をいやおうなしに「任された」側です。「大切」なモンなら「誰にでもはっきりとあからさまに『大切』である事が伝わる様に扱っておけ!積上げて地層にして、数十年ぶりに「発掘」して「これは大切」とか言い出しても、その『大切』は認めない!!そんなに惜しいなら全部持って行け!」…色んなムカつき事項を思い出してみた
大変楽しく読みましたAmazonレビューより
遺品整理って本当に大変なんです。
遺品整理に関するよくある質問(FAQ)
Q1.遺品整理は実際どれくらい大変ですか?
A.想像以上に体力・気力を消耗します。
重い家具や大量の生活用品、水分を含んだ瓶詰めなど、体力的負担はかなり大きいです。
精神的にも「捨てていいのか」という迷いが続き、長期戦になりやすい作業です。
Q2.姑の遺品整理を「嫁」がするのは普通ですか?
A.現実には「嫁が主に担うケース」は少なくありません。
特に同居していた場合や、娘が遠方に住んでいる場合、嫁が中心となって整理を進めるケースが多く、負担が偏りやすいのが実情です。
Q3.遺品整理で一番困るものは何ですか?
A.処分しにくく、量が多いものです。
漬物や梅酒などの瓶詰め、古い布類、ガラスケースの置物などは重く、捨て方も分かりにくいため、大きなストレスになります。
Q4.遺品整理で家族と揉めやすいポイントは?
A.「思い出」と「現実」の温度差です。
実際に片付けない家族ほど「取っておいて」「捨てないで」と言いがちで、作業をする側との間に大きな溝が生まれます。
Q5.遺品整理を業者に頼むと、費用はいくらくらいかかりますか?
A.内容によっては数十万円単位になることもあります。
本記事内の事例では、途中まで自力で行った後、業者に依頼して約70万円かかったケースが紹介されています。量や間取りによって大きく変動します。
Q6.遺品整理は一人でやらないといけませんか?
A.無理に一人で抱え込む必要はありません。
体調を崩してしまう人も多く、家族や信頼できる第三者、場合によっては業者の力を借りることも重要です。
Q7.遺品整理を始める前に気をつけることは?
A.いきなり片付け始めないことです。
まずは家全体をざっと見渡し、計画を立ててから進めることで、体力・気力の消耗を防げます。
Q8.「ウエス」とは何ですか?
A.古着や布の端切れを再利用した清掃用の布です。
油汚れなどを拭き取るために使われ、分別や再利用の知識として知っておくと役立ちます。
Q9.遺品整理を経験して感じた一番の教訓は?
A.終活は元気なうちに始めるべき、ということです。
自分にとって大切な物でも、残された人にとっては負担になる可能性があります。
Q10.『姑の遺品整理は、迷惑です』はどんな人におすすめの本ですか?
A.遺品整理に直面している人、これから向き合う人すべてにおすすめです。
嫁の立場、家族関係、費用、感情の揺れなどがリアルに描かれており、現実的な心構えができます。
まとめ|終活は「今」からでいい
この本を読んで、強く思いました。
遺品整理のことを考えて、終活は元気なうちに始めるべきだ と。
見られたくないものは、今すぐ処分する。
自分にとっての思い出が、
残された人にとっては「迷惑なモノ」になるかもしれない。
『姑の遺品整理は、迷惑です』は、
今まさに遺品整理に直面している人にも、
これからその立場になるかもしれない人にも、
現実と向き合う勇気をくれる一冊です。
次は、あなたの家の「地層」を
ほんの少しだけ掘り起こしてみませんか?
まずは 「自分が見られて困るものを一つ捨てる」 ところからで十分です。



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